過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第74章 過去へ続く道
「おい、おまえら。ナナシを見失うなよ」
「「「「了解しました!」」」」
リヴァイの号令と共に各自が持ち場に散っていく。
馬車のナナシに対し、リヴァイ達は調査兵団の馬を使用しているので
遅れは取らないだろうが、相手はナナシなので油断は出来ない。
班員達は少しの違和感も見逃さないように馬車を注視していたが、
郊外へ抜ける道に差し掛かった時、リヴァイが異変に気づいた。
ナナシの体重はそれ程重くはないが、
それにしては馬車が軽すぎないか、と。
すぐに馬を飛ばして馬車に横付けすると、
御者に馬車を止めさせ中を検めた瞬間、絶句した。
馬車の中はもぬけの殻で、座席に触れてみても冷たく、
かなり前からナナシがここに乗っていなかった事が窺えた。
「おい、御者!乗せた客はどうしたっ!?」
物凄い剣幕でリヴァイが詰め寄ると、
何が何だか分からない御者のオヤジは「ひっ!?」と
縮こまりながら何があったか説明した。
御者曰く――――
ナナシが乗った際、多めの金子を寄越し、
自分は出発してすぐの急カーブで飛び降りるから、
何食わぬ顔でこのまま郊外まで走り続けて欲しい、と・・・。