過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第74章 過去へ続く道
ナナシを一人で街に出して、自称家族共が迎えに来たり、
『狼』の縁者がナナシに接触してこないとも限らないので、
エルヴィンとしては絶対にそれは避けたい。
ナナシが契約を破って出奔するとは思わないが、
何やら胸騒ぎがしてならないのだ。
彼がやたらと一人になりたがっているのも気になる。
だが、それを馬鹿正直にナナシに言う訳にもいかず、
エルヴィンは言葉に詰まった。
・・・ナナシを一人で行かせ、精鋭に尾行させるか。
「わかった。ただし、ちゃんとその日の内に帰って来なさい。
これは命令だ」
「了解した」
ナナシは団長執務室から出ると、ホッと安堵の息を吐いた。
貰った休みの日に、昔の仲間だったコンラッドに
会いに行こうと思っているので、調査兵団の誰かが着いて
来られては困るのだ。
・・・・まぁ、あのエルヴィンが私一人で街中を
歩かせるはずは無いだろうがな。
二ヶ月近く共にいると、嫌でもエルヴィンの思考がわかってきている。
彼の用意する尾行者をどう撒くか考えながら、
ナナシは自室へと戻っていった。