過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第73章 心臓は何処?
ナナシの顔色が相当悪く見えたので、
エルヴィンは「ちょっと飲み物を取ってくるから待っていなさい」と言うと、
足早にダンスホールへ入っていった。
夜風がひんやりしていて気持ち良いので、
落胆したナナシの頭も少しは落ち着くだろう。
手摺に身体を凭れさせながら、エルヴィンを待っていると
彼とは違う足音が近づいてくるのに気付き、内心で舌打ちする。
今他人に構っていられるほど自分には余裕が無いのだ。
無視を決め込もうと目を伏せていたが、
その人物はナナシの至近距離まで近づき「もし・・・?」と
声を掛けてきた。
声を掛けてきた相手を無視し続けたら、
エルヴィンの立場が悪くなるだろうかと考え、
瞼を上げると信じられない人物が目の前に立っていた。
「―――コンラッド!?」
上質な燕尾服に身を包み、優しげな笑みを称えて
こちらを見つめている青年は、かつて『迅鬼狼』で
ソロモンに着いて王都へ向かった仲間の姿だった。
ソロモンが処刑された後、
ソロモンと共に王都に行った一部の仲間達の消息は
わからないままだったから、殺されてしまったとばかり
思っていたのだ。
それなのに、今目の前にいるとは―――っ!!