過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第73章 心臓は何処?
「噂だけは聞いた事がおありの御仁もいらっしゃるでしょう。
これは『不死の心臓』と呼ばれる逸品で・・・・」
伯爵の説明に誰もがその『心臓』に釘付けになる中、
ナナシはそれが偽物だと確信する。
こんな近くにいるのに自分がわからなかったはずは無いし、
何の気配も感じられない。
伯爵は偽物を掴まされ、それが『本物』だと信じているのだろう。
ナナシは酷く落胆した。
「その様子だと・・・あれは偽物だったようだね。
・・・期待させてすまなかった」
ナナシの様子に気づいたエルヴィンが気遣わしげに声を掛け
謝罪してきたが、今まで見つからなかったものが、
そう簡単に見つかるはずが無いのだ。
この情報を持って来てくれたエルヴィンは全然悪くない。
期待し過ぎてしまった自分が悪かったのだ。
「お主が謝る必要は無い。ここに偽物があるとわかっただけでも
充分な収獲だ。ありがとう」
弱く笑って礼を述べるナナシにエルヴィンは眉尻を下げ、
再度「本当にすまない」と口にする。
目的のものが無ければこんな所にはもう用は無い為、
伯爵には「婚約者が心臓に驚いてしまったので退席させて頂きます」
と告げると、元いたダンスホールにあるテラスへと向かった。