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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第70章 心からの微笑み









「ならば、私と一緒に海を見に行こう。きっととても綺麗だ。
私が君を海へ連れて行くよ」


エルヴィンの言葉にナナシは息を呑む。


ソロモンや仲間達と語り合った夢は、
当時ナナシの胸を熱くさせたものだったが、
ソロモンは「行けたら素敵ですね」とは言っても
「一緒に行こう」とは言ってくれなかった。

彼は堅実過ぎたのかもしれない。

出来もしない約束はしないという彼なりの誠意だったのかもしれないが、
嘘でも良いからその言葉を聞きたかったのに、
彼は最期まで欲しい言葉をくれなかった。


ポロポロとナナシの目から涙が溢れる。

エルヴィンもきっと出来ない約束はしない主義のはずだ。
それでも彼は欲しい言葉をナナシに与えてくれた。
嬉しくないはずがない。

ソロモンと果たせなかった夢をエルヴィンと叶えようとするなんて、
自分はなんて酷い奴なんだと思うが、死んでしまったソロモンが悪い。

自分にはもう実質的に迅鬼狼の仲間はいない。
エルヴィンとまた夢を見たって罰は当たらないはずだ。


突然泣き出したナナシに驚いたエルヴィンは、
慌てて席を立ってハンカチを取り出し、その涙を優しく拭う。

ポロポロと涙を流し続けながらナナシは忘れかけていた
本当の笑顔をエルヴィンに向けた。


「エルヴィン、連れて行ってくれ。お主と一緒に青い海が見たい」


ナナシの笑顔を見た瞬間、エルヴィンは力いっぱい
その身体を抱き締めた。




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