過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第69章 デートしよう!
「なら、私だと思って大事にしてくれ。
君に私以外のものが大事にされているかと思うと嫉妬心が湧くが、
天邪鬼な君がコッソリ私の分身を可愛がっていてくれていると思えば
微笑ましく思えるからね」
どうやら自分に拒否権は無いらしい。
エルヴィンの嬉しそうな笑顔を見ていると
拒否する気も起きなくなるが、本当に自分勝手な男だと思う。
だが、ぬいぐるみに罪は無いので素直に貰うことにした。
「ならば有り難く頂こう。今日からよろしくな、ぬいぐるみよ・・・」
チュッとナナシがぬいぐるみの鼻にキスすると、
エルヴィンは嬉しそうな顔から一転、複雑そうな表情をして
ぬいぐるみを取り上げた。
「私は君からキスをして貰った事が無いのに、
ぬいぐるみはあっさりと君からキスを貰えるなんて・・・・
やはり許せないな。燃やしたくなる」
「ふざけるな!物を粗末にする男は嫌いだ」
バッとエルヴィンからぬいぐるみを取り返して、
ナナシは彼を置いてさっさと店から出て行った。
人に物を買い与えたり、買い与えたものに嫉妬したりと
訳の分からない男だ。
嫉妬深いにも程がある。
早足で歩いたにも関わらず、リーチの差であっという間に
エルヴィンに追いつかれたナナシが不機嫌さを隠さず舌打ちすると、
彼は苦笑しながら「冗談だよ」と言った。