過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第69章 デートしよう!
何を言っても無駄だと考え投げ遣り気味に返して、
エルヴィン似のぬいぐるみを手に取りまじまじと見つめる。
手で持てる大きさで造られた大型犬のぬいぐるみはとても可愛い。
エルヴィンも外見だけ見れば格好良いのだが、
人の言う事を全く聞かない所とか変態な所を考えると、
溜息だけしか出てこない。
ぬいぐるみを持って溜息を吐いたのをどう取ったのか、
エルヴィンはナナシの手からやんわりそれを奪い取ると、
あっという間に会計をしてしまった。
戻ってきたエルヴィンがニッコリ笑ってそのぬいぐるみを
渡してきたものだから、ナナシの困惑は更に増したが、
暫くすると思考停止していた脳が漸く活動を再開し、
欲しがっていたと勘違いされてしまったのだという事に気づいた。
「エ、エルヴィン!私はこのぬいぐるみが欲しかった訳では・・・」
「え?でも、このぬいぐるみを凝視して溜息を吐いていたじゃないか。
てっきり、私に遠慮して言い出せないのかと・・・」
「違う。誤解だ。・・・ただ、このぬいぐるみが
お主に似ているなと思っていただけで他意は無かった」
「・・・・・似ている?」
エルヴィンは首を傾げてぬいぐるみを見つめた後、
「尚更良かった」と満面の笑みを浮かべた。