過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第69章 デートしよう!
「似合っているよ、ナナシ」
門にいたエルヴィンは先程とは打って変わってデレデレした
締りのない顔でナナシを見下ろしていた。
エルヴィンも私服に着替えたらしく、
グレーのスラックスに白いシャツ、
仕立ての良いコートを着ていたが、それが問題ではない。
「・・・・・・・・おい、小童。これはどういう事だ?」
地を這うような声でギロリと睨みつけたが効果は全くないようで、
エルヴィンはナナシを上から下まで舐めるように見て
満足そうに頷いた。
「あぁ、やはり何度見ても似合っているよ。
いっそ人目に晒さずどこかへ閉じ込めてしまいたい可愛さだ」
「サラッと恐ろしい事抜かすな。で?
この格好をしなければならない理由は何だ?」
顔を顰めながらエルヴィンを見上げるナナシの服は
水色のワンピースに白いコート、コートとお揃いの帽子という
出で立ちだった。
どっからどう見ても女物でしかない服を着なければならない理由を言え、と
胸倉を掴んできたナナシの手をやんわり握ったエルヴィンは
「理由は道すがら話すと言っただろう?」と笑って強引に歩き出した。
手を引かれた状態のナナシも自然と歩く羽目になり
不承不承ながらエルヴィンに着いて行く。
何だかんだで女物の服を着て待ち合わせ場所まで来てしまった自分は
とんだお人好しだとは思ったが、エルヴィンには何か深い考えが
あるのかもしれないと自分に言い聞かせて足を進めた。
だが、辿り着いた先でナナシはエルヴィンに
殺意を覚える羽目になるのだった。