過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第10章 もう子供じゃない
「この・・・配置されている駒は何人で行動しておるのだ?」
「・・・・・何人とは?」
「初列にいる兵士は何人の班で構成されているのかと聞いている。
あと他の人数だ」
「・・・・・・・・・・・・」
エルヴィンは別人のように陣形に見入っているナナシに
驚きの目を向けた。
まだ何の説明もしていないというのに
ナナシは昔からこの陣形を知っているかのような口振りで
普通にエルヴィンに質問を繰り返す。
ナナシが何を知っていて、何を言いたいのか・・・。
エルヴィンは好奇心をぐっと抑え、
努めて冷静な声色で質問に答えた。
「基本初列は一人ずつだ。
前後左右が見える等間隔に兵を展開し可能な限り巨人を避ける。
荷馬車の護衛や中央は4,5人の配置かな」
「・・・奇行種と遭遇した場合、初列はどう対処するのだ?」
「その場合は一人、もしくは周囲にいる兵が駆けつけ巨人を討伐する」
「そうなったら陣形が崩れるではないか」
「また陣形を再展開すれば問題ない」
「・・・・逃げることに特化し過ぎるのも問題、か・・・」
ボソリと呟かれた言葉にエルヴィンは目を見張った。
それはエルヴィンも常々思っていた事で・・・
しかし、調査兵団の万年人員不足から解決出来ないでいる問題でもあり、
打開策が今のところ見つからないのが現状だった。
「何か打開策があると思うかい?」
「・・・・・兵士の質が・・・・・・・・・」
そこまで言い掛けたナナシが我に返ったかのように
エルヴィンを見上げると、罰が悪そうに「何でもない…」と
視線をまた紙面に落とした。
彼にはしっかりとした考えがあるのだという確信を得つつ、
それに気づかない振りをして話を先に進める。
畳み掛けるのは今ではないと判断したからだ。
黙ってエルヴィンの話に耳を傾けていたナナシは
また何かに引っかかりを覚えたらしく首を傾げた。