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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第10章 もう子供じゃない





「やぁ、ナナシ!」

「・・・・・・・・・・・」


次の日にも現れたエルヴィンに
ナナシは無言のまま批難の視線を向けたが、
相手は全く堪えない。

昨日とは違う場所でデータ採取を行っていたというのに、
何故かまた見つかってしまった。

いい加減面倒になってくる。

どうやら今日は昨日一緒だった若造はいないようだ。


「・・・・帰れ」

「そのうち帰るよ。それよりも見てもらいたいものがあるんだ」


話を噛み合わせる気も無さそうなエルヴィンは懐から紙を取り出し、
ナナシに見えるように広げた。


「私が考案した長距離索敵陣形というものなのだが、
君はどう思う?」


まるで子供が親に自慢するように目をキラキラさせてくる様は
可愛らしく見えなくもない・・・・が、
エルヴィンはもうおっさんだ。

キラキラさせている眼の奥には、
隠しきれていない獰猛な色も潜んでいることに
ナナシは気づいている。

グイグイ押し付けてくる紙面を仕方ない・・・と
諦めの境地で覗き込んだが、陣形が目に入ると
食い入るようにそれを凝視した。

巨人との遭遇を回避する事に特化したそれは
とても画期的だと思う。

しかし、ナナシの中で疑問点がいくつも浮上した。


「これを考えたのはお主なのか?」

「そうだよ。昔『無駄な争いは避けろ』と言った君の言葉通りだった。
完全ではないが、この陣形で壁外での生存確率が飛躍的に上がったからね」

「・・・・・・」


エルヴィンの言葉を聞いて、ナナシは『迅鬼狼』が得た情報を
握り潰されたのだと悟った。

ナナシの組織でもこれと似た陣形で壁外を進んでいたのだ。
だから、どれだけの情報が握り潰されたのか知りたくて、
ついつい彼に色々聞いてしまった。



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