過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第10章 もう子供じゃない
「信煙弾?」
「色によって状況を伝えるために使用しているが・・・何か?」
「雨や暴風時にはどうするんだ?夜間にも色を判別出来るとは思えんが・・・・」
痛いところをついてくる・・・。
今使っているやり方の弱点はまさにそこだった。
初めて陣形を試した時に襲った暴風雨で
それは身に沁みていたが、信煙弾を使用する以外の技術は
まだ発明されていない。
「他に連絡を伝える術が今のところ無いからね・・・」
「・・・え・・・・・・?」
不思議そうに見上げたナナシの瞳は困惑の色を浮かべていて、
何がそんなに引っ掛かったのかとエルヴィンは考えを巡らせた。
「君は・・・信煙弾以外の連絡方法を知っているのか?」
「・・・・・知らぬ」
今では実行出来ない方法で伝達をしていたのだと思い出し、
ナナシは自分の浅はかな言動に嫌気が差した。
自分とかつての仲間達にしか使えない特別な伝達方法は
現在使用不可能になっている。
エルヴィンからの追求を恐れ、傍を離れようと一歩踏み出すと
強い力で腕を引かれてしまった。
「目は口ほどに物を言う、という言葉を君ほど体現している人はいないね。
表情は無い癖にその蒼い瞳は私に色々と教えてくれるよ」
グッと両頬を掴まれ顔を上向きに固定されると、
否が応でも端正なエルヴィンの顔が視界に入ってきて
時の流れの早さを再認識してしまう。