過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第68章 役に立つには・・・
壁外で物資を無傷で運ぶにはどうしたら良いか――――。
それは此方が逸早く巨人の存在を発見し回避するか、
迎撃するかのどちらかだろう。
向こうに気づかれない内に仕留められれば、
此方の損害は最小限に抑えられる。
だが、一見簡単そうに聞こえるこの考え方は実行が困難だった。
まず巨人に気づかれる前に、此方が巨人の存在に気づくという事が
ほぼ不可能なのだ。
巨人は人間の気配に敏感ですぐに寄ってくる。
一体どうやって人間を認識しているのか・・・それは謎のままだ。
巨人程ではないが、ナナシも気配には敏感だ。
それは相手に同調して身体を操る能力と密接に関係していて、
まずは相手の気配などを探る所から始まっている。
正確な位置を把握し、身体能力を見透かし、
体内に流れる生体エネルギーを関知しそれに同調する。
その手順をやってナナシは相手の身体を支配出来た。
尤もこの能力は現在使えないが、
この能力の始めの手順である『正確な位置を把握する』のは使えるので、
上手くすれば巨人よりも早くその存在を察知出来る可能性が高い。
・・・のだが、如何せん化け物染みた特技の為、
どこまでが『人間の範疇』なのかよくわからない内から
誰かに話せるはずもなく、ナナシは嗅覚を駆使して
巨人を探知するミケの能力範囲を聞こうと声を掛けた。