過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第68章 役に立つには・・・
「私の考えではミケの班を荷馬車の護衛に付けようと思っている。
ミケの嗅覚で逸早く巨人の存在を把握出来れば、
対処もし易いだろう」
重い空気を察したエルヴィンが自分の意見を言うと、
班長達はエルヴィンの案に賛同する。
エルヴィンとしては自分の案を言う前に、
部下達がもっと画期的な案を提示してくれる事を期待していたのだが
残念な結果に終わった。
考えるのは自分の仕事か・・・と結論付けて、
取り敢えず会議を終える。
それぞれが壁外調査の準備の為会議室を後にする中、
ナナシがミケを呼び止めて何事か話している事に気づいたエルヴィンは
持っていた書類をグシャッと握り潰し、二人(主にミケ)を睨んだ。
エルヴィンの隣に座っていたリヴァイは溜息が吐きながら、
彼が握り潰した紙を甲斐甲斐しく伸ばしているのを
ハンジが失笑する。
「リヴァイは良いお嫁さんになれるね」
「あぁ?逆にてめぇは嫁の貰い手なんざ無いだろ。
ずぼらな女は嫌われるぞ」
「口煩い男も嫌われると思うけどねぇ~」
「馬鹿言え。一番嫌われんのはストーカーみたいに付き纏って、
少しでも他の男と話すと嫉妬する野郎だろうが」
「確かに・・・」
リヴァイとハンジが同時にエルヴィンを見たが、
彼はナナシとミケに気を取られていて
リヴァイ達の冷めた視線に気づかないまま
ギリギリと鬼のような形相で奥歯を噛み締めていた。
嫉妬に狂う男は恐いな、と珍しく二人の意見が一致した瞬間だった。