過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第66章 戦う理由
チーズを擦り終えたナナシは左右からリヴァイとミケに囲まれて、
どうしようか狼狽した。
猫(リヴァイ)と大型犬その2(ミケ)が、
物欲しそうな目でジッと見つめてくる様は、
無視が出来るレベルを遥かに超えて不可能になっている。
存在感があり過ぎるのだ。
お皿を持ってテーブルへ向かおうと足を進めると
二人が無言で着いて来るので、大変居心地が悪く辛い。
「・・・ナナシ、俺も腹が減ってる。そいつを食ってみたい」
「香ばしい匂いのするそれを食べてみたい。
エルヴィンは一口もくれなかった・・・」
リヴァイとミケがそう訴えてきたので、
思わずエルヴィンを睨みつけるが、
彼は自分の分のパスタを必死に死守しながら食べていて、
此方に見向きもしなかった。
一口ずつリヴァイとミケに与えても良いが、
果たして一口で終わるのだろうかとナナシは思う。
「・・・・一口やったら、お主らは満足するよな?」
「んな訳ねぇだろ。一口しかくれねぇんだったら、
おまえのチーズを酒の肴として全部食ってやるからな」
「それは妙案だ、リヴァイ。俺の部屋に丁度良い酒があるぞ」
あのチーズは高いからそれだけはやめて、マジで。
ナナシは泣きたくなりながらリヴァイとミケにパスタの皿を差し出し、
半分こするように譲り、残り少ない材料で自分の分のパスタを
また作り始めた。