過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第66章 戦う理由
「エルヴィン・・・戻っていたのか。お疲れ」
ミケがエルヴィンの傍に寄って労いの言葉を掛けてきたので、
エルヴィンは片手を上げ「あぁ、ただいま」と笑顔を向ける。
リヴァイはパスタの上にチーズを擦り下ろしているナナシに近づき、
ジッとパスタとナナシを交互に凝視していた。
物欲しそうな目を向けられ居心地が悪くなったが、
ここで気にしていたらパスタが食べられないと
ナナシは必死に無視を決め込む。
エルヴィンは大型犬だが、リヴァイは猫のようだなと漠然と思った。
「随分美味そうな物を食べているなエルヴィン・・・」
ミケがエルヴィンが食べているパスタを見つめながら
そう話しかけると、笑顔で返答が返ってきた。
「あぁ、とても美味しいよ。ナナシの料理は
私の疲れを癒してくれる魔法の料理さ」
「・・・・そうか、一口・・・」
「ダメだ。これは私がナナシから貰ったものだ。
一口でも一舐めでも誰かに譲る気は毛頭ない」
一口強請っただけのミケに、ピシャリと撥ね付けるエルヴィンの表情は
恐ろしい程冷ややかで・・・先程までの笑顔が嘘のようだった。
多分、エルヴィンに貰うのは不可能だろうと早々に見切りをつけ、
ナナシの下へ向かう。
恐らくリヴァイはエルヴィンに頼んでも
一口も貰えないと踏んでいたから
最初からナナシの所へ行ったのだろう。
良い判断をするなとミケは心の中でリヴァイの判断力を褒める。