過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第9章 欲しい・・・
森の奥深くを探すこと30分―――
名前を連呼された事に痺れを切らしたナナシが音もなく現れ、
エルヴィンは笑顔を向けた。
「やぁ、会えて良かったよ。君と話をしたいと思ってね」
「出口は向こうだ。とっとと帰れ」
「そうだね、では共に調査兵団に行こうか」
「お主ら二人で帰れ」
シッシッと邪険に扱われているにも関わらずエルヴィンが
めげている様子は微塵も感じられない。
その上、しっかりとナナシの両手を握っている様は
女性にプロポーズしている姿にも見えなくもないのだから
質が悪いとミケは思った。
「データを見させてもらったよ。君の才能は素晴らしい。
是非調査兵団に協力してもらいたい」
「断る」
「あと君の腕力も魅力的だ。先程受けた拳は破壊力抜群だったよ。
団長相手に暴力を働いた罪はそう軽くはないよ」
「わざと受けた癖にようもヌケヌケと・・・・・」
「何の事だい?素直に同行した方が君と司令のためになると
思うのだが・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
ニコニコ笑いながら脅すエルヴィンに
ナナシは呆れたような視線を向けた後、舌打ちをした。
「・・・・賢く生きろとは言ったが、
随分と可愛げのない男に成長したものだ・・・・・」
その言葉が引き金だった。
突然身体を引き寄せられ、
反応が遅れたナナシは抵抗する間も無く落ちてきた
エルヴィンの唇を受け止める羽目になった。
身体を離そうと試みたが、
腰と頭部に回された手がガッチリと身体を拘束していて
身動ぎ一つ出来ない。
口内を蹂躙してくるキスは手慣れた大人のそれで・・・・
素直に上手いと思ったが、これ以上続けられたら、
色々ヤバイと本能が警告を出してきた。
踵で隙だらけの足を思いっきり踏み付けてやると、
流石のエルヴィンも痛みに顔を歪めながら唇を離す。