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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第9章 欲しい・・・




取り付く島もない様子にピクシスは「やれやれ・・・」と
肩を竦め、紙に書かれたデータに目を通す。


「惜しいのぅ・・・これだけの才能があるものを・・・」


溜息混じりに呟いた言葉は本音なのだろう。

ピクシスは自然な動作でエルヴィンに書類を渡し、
また溜息を漏らした。

『これを見せてやるから黙認しろ』というピクシスの意図と共に
書類を受け取ったエルヴィンもそれに目を通した瞬間、
感嘆の声を上げる。


「惜しいですね・・・・・これは」

「そうじゃろう・・・」

「えぇ・・・」

「・・・・・・・・やらんぞ」


結婚報告をしに来た彼氏に「娘はやらん」と
言っているような物言いをするピクシスに思わず笑みが零れた。


「(黙認するので)是非この資料の提供も宜しくお願い致します、司令」


良い笑顔で言ったエルヴィンを胡乱な眼差しで見たピクシスは
念を押すように「やらんぞ」ともう一度言ったが、
エルヴィンがさらりとそれを流したのは言うまでもない。





執務室を出たエルヴィンとミケは足早に廊下を進んだ。

駐屯兵団兵士からの挨拶に手を上げながら答えてはいるが、
エルヴィンの目には捕食者の色が宿っており忙しなく眼球が動いている。


「ミケ・・・森に行くぞ」

「・・・・・・・ナナシという奴に会いに行くのか?」

「無論だ。まだ駐屯兵団に所属していないのなら横取りにはならないし、
彼の意志で調査兵団に来るなら司令に文句を言われる筋合いもないからな」

「そこまでの人材なのか・・・?」


ミケはデータを見ていないので彼の価値は半信半疑だが、
エルヴィンがそう判断したのならばそれを信じるだけだ。

彼に会った当初は私情を挟んでいるように見えたが、
今は団長モードに突入しているので心配は無さそうだと安堵する。

しかし、森に着いた途端「匂いで探せないか?」と聞かれた時には
流石のミケも「あ、今回は信用出来ないかも」と思ったとか思わなかったとか。





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