過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第9章 欲しい・・・
「まぁ、やましい事は無いからのぅ。・・・というか、
お主が男だというのは初耳じゃった」
笑いながら言ったピクシスの言葉にナナシ以外の全員が驚く。
「・・・それは・・・性別もわからない人物を駐屯兵団に
おいていると?」
「安心せい。健康診断は受けさせておる」
「問題はそこではありません、司令」
「じゃが、ナナシが裸を見せてくれんのだから致し方無いじゃろう?」
「・・・ナナシ?」
やり取りの間に零れた名前らしき言葉に
エルヴィンが反応するとピクシスはニヤリと笑った。
「其奴の名前じゃ。本当の名かは知らんが、そう呼んでおる」
「司令・・・お言葉ですが」
「お主の所の人類最強も、元々は身元不明であろう?
『リヴァイ』というのが本当の名という証拠はあるのか?
あったとして、それを公に出来るというのか?」
「・・・・・・それは・・・」
一筋縄ではいかないピクシスに今度はエルヴィンが口を噤む羽目になった。
「それに今は駐屯兵団所属では無いが、
将来入団させたいと考えておる。
調査兵団に『人類最強』がおるように、
駐屯兵団には『最後の砦』が存在するとな」
「・・・・・最後の・・・砦ですか?」
真剣に語るピクシスにエルヴィンは真意を探ろうとするが、
その前にナナシと呼ばれる人物が口を開いた。
「私の持論を知っている癖に世迷い言を申すな、ピクシス。
不愉快だ」
「そうは言うがな、ナナシ・・・」
「これ・・・今日の分」
一方的に話を切り上げ、
ピクシスに向かって紙の束を投げつけたナナシは
さっさと部屋から出て行ってしまった。