過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第63章 気遣いと下心
エルヴィンは食堂内で見た光景に愕然とした。
ナナシは確かに食堂でいつものように食事を摂っていた。
しかし、早朝にも関わらず多くの兵士がナナシを取り囲み
(その大半は男)、テーブルの上には兵士達から
貢がれたであろう食べ物が積み上がっていた。
自分の言いつけを守らず、他の兵士と仲良く話すナナシに
怒りと嫉妬が生まれる。
だから敢えて怒気を殺さず、声を掛けた。
案の定兵士達は蜘蛛の子を散らすようにナナシから離れていったが、
当のナナシは不思議そうにしていたので怒りは収まらなかった。
強引に抱き抱えるとナナシは心底驚いたようだったが、
それでもまだ食事に執着したので怒りが更に増幅する。
挙句の果てにはリヴァイに助けを求める始末。
エルヴィンの中の何かが切れた瞬間だった。
怒るとナナシはシュンとして静かになった。
お腹を擦っていた事からまだ空腹なのだと察せられたが、
エルヴィンはそのサインを無視する事にした。
時折チラチラと顔色を窺ってくるナナシが可愛かったから、
という理由だけで。