過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第63章 気遣いと下心
食堂の入り口の壁に凭れたながら声を掛けてきたのは、
ここの団長のエルヴィン・スミスで・・・朝っぱらから頗る
機嫌が悪そうだった。
その姿を認識した兵士達は足早に席を離れていき、
残されたのはナナシと貢物で溢れたテーブルのみ。
「何って・・・朝食を食べているだけだぞ?」
彼の質問にちゃんと答えたのに、
エルヴィンは更に鋭い眼光を向けてきた。
一体何をそんなに怒っているのだろうか?
首を傾げていると、エルヴィンは傍まで近づいてきて
食事途中のナナシを強引に担ぎ上げた。
突然の行動に驚いた弾みで手に持っていたスプーンが
床に落ちてしまったので拾わなきゃと思ったが、
エルヴィンはナナシを抱き上げたまま歩き出してしまった。
「え・・・ちょっ!まだ食事の途中」
暴れてみたものの左足の傷が痛むので大した抵抗にもならず
食堂の入り口に差し掛かった時、
そこで朝食を取りに来たと思われるリヴァイと目が合った。
思わず彼に助けを求める。
「リヴァイ!助けて!食事がまだ途中なんだ!」
「私に抱かれている最中、他の男の名前を呼ぶんじゃないっ!」
額に青筋を浮かべたエルヴィンがいつもと違って恐かったので、
ナナシは口を噤んでまだ空腹のお腹を擦った。
よくわからないが、大人しくしていた方が良いだろう。
ナナシはエルヴィンによって、自室へ強制送還された。