過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第63章 気遣いと下心
コンコンと扉をノックしたが、ナナシからの応答が無い。
もしかして熱が更に上がってベッドで苦しんでいるのではっ!?
という焦燥を抱き、エルヴィンは迷うこと無く
合鍵を使って中へ入った。
室内を見た瞬間、エルヴィンは言葉を失う。
そこはもぬけの殻で、ベッドにいるはずのナナシがいなかった。
布団に触れてみると温もりが感じられず、
ナナシがベッドを出て大分経っている事がわかった。
あの怪我で一体どこへ行ってしまったんだっ!?
エルヴィンが蒼白になりながら部屋を飛び出した所で、
ミケが慌ててエルヴィンの下にやってきた。
「大変だ、エルヴィン!ナナシが・・・っ!」
「ナナシがどうしたんだっ!?ミケ!」
物凄い形相で詰め寄ってくるエルヴィンにミケが
「落ち着け・・・」と宥めたが、エルヴィンにとって
落ち着いていられない状況だった。
睨んでミケに話の先を促すと、彼は何とも言えない表情で報告する。