過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第61章 あの人は太陽、あなたはまるで月のよう
エルヴィンが呆れたように溜息を吐いて
ナナシに動かないように厳命して待っていると、
すぐに他の兵士や兵服に着替えたハンジが到着して
ナナシの怪我の具合を診た。
満足な灯りが無いせいで大した応急処置も出来ず、
ハンジは眉を寄せる。
「ダメだ、エルヴィン。ここじゃ全然見えないよ。
これ以上体温が低くなると体に良くないから、
早く移動しよう」
ナナシの身体にはハンジ達に貰った毛布が掛けられていたが、
夜が更けると気温が下がるのでどうしても身体が冷えてしまう。
リヴァイ達からも現場の報告を受けたエルヴィンは
ハンジの言葉に従い、撤収するように命令を出した。
やっと帰れるとナナシが安堵していると
自然な動作でエルヴィンに抱き上げられ、ギョッとする。
しかも横抱き・・・俗に言う『お姫様抱っこ』だ。
「お、おい!エルヴィン、降ろせ!自分で歩ける!」
「何を言っているんだっ!?君は足に重傷を負っているんだぞっ!?」
「大丈夫だ!痛くないから降ろせ!」
男としてお姫様抱っこされる屈辱と、
彼らに心配させまいと発した言葉だったが、
それを聞いたエルヴィン達の顔に暗い影が落ちたので
ナナシは「どうしたんだ?」と不思議に思った。