過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第61章 あの人は太陽、あなたはまるで月のよう
「―――ナナシっ!!無事かっ!?」
月明かりしか無くても、泣きそうな顔で
ナナシを覗き込むエルヴィンの姿がはっきり見えた。
上体を起こそうとするとすぐにエルヴィンは腕で身体を支えてくれて、
その温かさに肌寒さが緩和する。
怪我をしている足を見た彼が迷うこと無く
自分の上質なタキシードの袖を引き千切り、
ナナシの足に巻いた。
「・・・・撃たれたのか?」
と苦渋に満ちた表情をされたので、
ナナシは「ライフルは撃たれる前に叩き落とした」と答える。
「では何故こんな酷い怪我を・・・?君程の強者が・・・・」
ライフルの対処は出来るくせに、とても間抜けな不注意で
怪我を負ってしまったのであまり言いたくなかったが、
辛そうな表情でそう言われてしまえば、
怪我の原因を言わねばなるまい。
「・・・・・・・・・・・崖から落ちた時、木に刺さりました」
「・・・・え・・・・・」
拗ねたように言ったナナシにエルヴィンは一瞬目を丸くしたが、
すぐに厳しい顔をした。
「という事は、まだ足に木片が残っているかもしれないな。
救護班が到着するまでは下手に動かさない方が良い」
「あぁ・・・多分無いと思うぞ?
私から救護班に行った方が早いのではないか?」
「・・・・・・・それでは本末転倒だ。
怪我が悪化したらどうする?命令だ、動くな」