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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第8章 邂逅




何事かと心配になってエルヴィンの顔を覗き込めば、
彼は顔面蒼白になりながら「…腹を殴られてしまった」と告げた。


ミケはその言葉に固まる。
エルヴィンはガタイが良く筋骨隆々で、
ちょっとやそっとの打撃ではびくともしないはずだ。
それが膝を折って痛みに耐えているとは信じられないことだった。


それに…曲がりなりにも自分の団長を殴られて平気でいられる程、
ミケはお人好しではない。

確かにエルヴィンは殴られるような事をしたかもしれないが、
これは過剰防衛である。


ミケは立ち上がると、銀髪の男を追った。
体格的にミケの方に分がある。
暴力に訴えるつもりはないが、
彼を捕まえてエルヴィンに謝罪させたいと思い手を伸ばした所で


「エルヴィン団長?ミケ分隊長?こんな所でどうかしましたか?」


という声が聞こえ我に返り、声のした方へと身体を向ける。

そこにはピクシスの側近のアンカ・ラインベルガーがおり、
只ならぬ三人の様子に首を傾げた。


「すまない。少々駐屯兵団を見学させてもらっていてね」

「そうですか」


先程まで膝を折り痛みに耐えていたことを噫にも出さず
笑顔で答えるエルヴィンにアンカは頷き、
チラリとナナシの方へと視線をやった。

それに目聡く気づいたエルヴィンがアンカへと矛先を変える。


「すまないが、あの子の所属と名前を尋ねても?」

「え?」

「もしも彼が駐屯兵団所属で無いとすると、
民間人に機密である立体機動装置を貸し出している時点で
問題になるだろう。これは由々しき事であり一兵団長として
見過ごすことは出来ない」


アンカの表情に動揺が走ったところを畳み掛けるようにして言うと、
彼女は何かを思案するように黙り込む。

どのように対処すれば目を瞑ってもらえるか、
ピクシスや駐屯兵団の益を損なわないか必死に考えているのだろう。

調査兵団にも彼女のように優秀な副官が欲しいと思ったところで、
抑揚のない声がエルヴィンの耳に届いた。


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