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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第8章 邂逅




「自己紹介がまだだったね。私は調査兵団団長エルヴィン・スミスという者だ。
こちらは同じく分隊長のミケ・ザカリアス。君の名前は?」

「・・・・・・・・」

「では、今は答えなくても構わないから先程取っていたデータを
見せて貰えないかな?」


やっと本題を切り出したかとミケは安堵の息を吐いたが、
銀髪も相当手強かった。


「何の事だ?」

「惚けなくて良いよ。少しの間、君を観察させてもらっていた。
君が立体機動のデータを取っていたことはわかっているんだ」


後半からはナンパな男ではなく、威厳のある調査兵団団長としての言葉だった。
普通の人間なら気圧されるそれに、
銀髪の人物は顔色一つ変えず反論する。


「尚更、お主に見せることは出来ぬな。情報は武器になる。
情報を知りたくばピクシスに掛け合ってみよ。
私の一存でどうにかして良いものではない」

「………ピクシス司令…か、成程」


笑みを深めたエルヴィンは愛しい者を見るかのように彼を見つめた。


「君は律儀で筋を通す人のようだ。実に良い。
是非調査兵団へ来て貰いたい」


自然な動作で手を掬い取ったエルヴィンは、
女性にするかのようにナナシの手の甲へ唇を落とした。

チュッというリップ音がやたらと響き、
ミケは誰でも良い・・・この場から解放してくれ、と居た堪れなくなる。


軟派に変わり果てたエルヴィンの様子を見たら、
兵団の連中はどう思うだろうか?

ハンジだったらまず笑い転げるだろう。
リヴァイは無表情で凍りつきそうだ。
ナナバはきっと苦笑いを浮かべるだろう。

では自分は?自分の取るべき行動は何か…。


それは……見て見ぬ振りだっ!!


二人を全身全霊で自分の意識化から排除するしか自分を守る術はない。

そう思った時、「ぐっ!」というエルヴィンの呻き声が聞こえ
意識を現実に戻すと、丁度彼が膝を折り蹲っているところだった。


銀髪の男は何事もなかったかのように歩き去って行く。


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