過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第8章 邂逅
「ラインベルガー補佐官、自分の事はピクシス司令の判断を仰ぐのが一番だ。
やましい事が無い以上、他兵団の横槍に耳を傾けるべきでは無い。
そうであろう?」
「・・・そうですね。エルヴィン団長、失礼ですが
当初の予定通りピクシス司令とお会いになって下さい」
普段の冷静さを取り戻したアンカにエルヴィンは内心舌打ちする。
彼の情報を少しでも聞き出せると踏んだのに、
当の本人からそれを阻止されるとは・・・。
「では、彼も同行させてもよろしいですね?
万が一、彼がどこかのスパイであったなら一大事です。
身元を明かせないのなら尚更・・・良いね?」
最後は銀髪の人物へ向けた言葉で、
彼は面倒臭そうにしながらも大人しく着いて来た。
アンカ、ミケ、ナナシ、エルヴィンの順で森のなかを歩く。
問題の彼に立体機動装置を外させ、
威嚇を込めてエルヴィンとミケの間を歩かせたが
それもどこ吹く風で流されてしまっているようで効果はなかった。
少しでも何かしらの動揺が拾えれば、
そこを攻められると思っていただけにエルヴィンの落胆は大きい。
前を歩く小柄な人物をエルヴィンは感慨深けに見つめ、
密かに溜息を吐いた。
昔・・・幼い自分は彼とよく似た人物の背中を必死で追いかけた。
彼女の言葉を胸に今まで生きてきたが、
再会する事もなく時間だけが過ぎ去ってゆき
今ではエルヴィンも大分歳を重ねてしまったなと苦笑する。
例え彼と彼女の容姿、声、口調が似ていても同一人物であるはずがないのに・・・。