過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第59章 兵士として、男として・・・
「エルヴィン、ナナシが奴らと・・・」
「わかっている。見えていた」
リヴァイが伝えようとした言葉を遮ったエルヴィンは、
連れて行かれる人質の中にナナシが混じっていた事に気づいていたが、
そのまま見送った。
一瞬だけ目配せを送ってきたナナシの様子から、
自ら渦中に飛び込んだのだろう。
その他にも二人、調査兵団の女性兵士が混ざっていたので、
彼女達がいれば人質達の安全を確保出来る可能性が上がる。
だが、そうとはわかっていてもナナシが連れて行かれる様を
黙って見送るしか無かった事実をとても歯痒く感じた。
「おい!エルヴィン・スミスっ!!」
部下から立体機動装置を受け取っていると、
青筋を立てたベッカーがエルヴィンを睨みつけていて
娘を助けられなかった事への批難を矢継ぎ早に捲し立ててきた。