過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第57章 修羅場
「おい、それは止せ。靴を履いていたから絶対臭い」
「それもおまえの匂いだ。構わない」
「こっちが構う!匂いを嗅いでお主が倒れたらショックを受けるぞ」
ナナシの慌て振りに、ミケは「ふはっ」と破顔すると
「絶対そんな事にはならない」と断言して鼻先を足へ向けた。
いつものようにスンスンと鼻を鳴らして
匂いを嗅いでいる姿を見ていると、そわそわ落ち着かなくなる。
一分くらいしてから無言のミケに「臭いだろう?」と
ナナシが尋ねると、彼は「いや?そんな事ないぞ」と言って、
ナナシの足の甲を舌で舐め上げた。
「・・・ひっ・・・!」
突然舐められたので無防備状態だったナナシは、
つい変な声を上げてしまい恥ずかしくなる。
「・・・良い声で啼くんだな。恥じらってるおまえは貴重だ」
「五月蝿い。いい加減足を解放しろ」
「知っているか?おまえは普段異常なくらい体臭が薄い。
それこそ密着して匂いを嗅がないとわからない程に・・・」
自分の言葉を無視して話し始めたミケに、
ナナシは怪訝な顔を向ける。
最近、リヴァイとミケの考えもよくわからなくなってきていたので、
どうして今ミケがそんな話をし始めたのか困惑していた。
「・・・だが、おまえは感情が昂ったりすると匂いが出る。
怒り、困惑、喜び・・・どんな感情でも関係無いらしい」
ミケの指摘にナナシは目を丸くして驚いた。