過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第56章 悩ましい詰問
「何故私の傍から離れた?」
顔を胸に押し付けながら喋っているので、
エルヴィンの声はややくぐもっている。
エルヴィンが言葉を発する度にナナシの胸に
熱い吐息が掛かるので微妙な気分にさせられてきた。
「料理を・・・食べたかった」
「そうだね、君の目的は食事だった。だが私は必要な時には
傍にいてほしいと懇願していたはずだ」
「食べたいって訴えたのに無視された」
「だからと言って黙って傍を離れるのはいけない事だ。
もう少しで君の純潔が危なかった」
・・・・・・・・・もう純潔は残っていないのだけど。
そう考えていると、ナナシが何も返してこない理由を察して、
エルヴィンは胸から顔を上げナナシの顔を覗き込む。
「まさか・・・もう誰かと経験が?」
そりゃ長年生きているのだから経験があるに決っている。
女性体でも男性体でも、一応は・・・。
経験があると教えておくべきなのかとエルヴィンの顔を見ると、
ショックを受けたような表情をしていたので何となく言い辛かった。
こいつは私を何だと思っているのだろうか?
エルヴィンは眉根を寄せるとまた胸に顔を押し付けて
悔しがるように唸った。