過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第55章 悪質
「待て!エルヴィン!」
そう叫びながら人垣を掻き分けて来たのはナイルで、
男はナイルを見とめると「師団長!助けてください!」と
泣き叫んだ。
ナイルは頭を抱えながら、殺気立っているエルヴィンを
なだめるように話し掛ける。
「すまん。おまえが怒るのも無理ないが、ここは俺の顔を立てて
穏便に済ませて貰えないか?こいつにはちゃんと処分を下すから・・・」
「処分とはどんな処分だ?これはおまえの教育不足のせいでも
あるんだぞ?そんなおまえがきちんと処分を下せるのか?」
「あー・・・俺の監督不行き届きなのは認めよう。
処分としては半年間の減俸って所が妥当じゃないか?」
「生温いな、ナイル。そんなもので彼が反省するとでも?」
「じゃあ、どんな処分が良いってんだよ?」
ガシガシと頭を掻きながら言ったナイルに、
エルヴィンが冷徹な表情で開拓地への異動か調査兵団への異動を
提示したので誰もが絶句した。
たかが人の女に手を出しただけで異動とはとても重い処分である。
それだけエルヴィンが怒っているのだと更に周囲はどよめいた。