過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第54章 ナナリー
「いやですよ、司令。彼女は自分で決めて私の所へ来てくれたんです」
「じゃがのう・・・お主と会ってから其奴は酷く動揺しておったぞ。
まるで恐い何かに怯えるようにカタカタと震えておった」
「私との再会に心を震わせて喜んでくれていたのでしょう」
はははは、と上辺だけの笑みを浮かべた二人の舌戦は凄まじく、
見ている人間の方が辛く感じた。
ナイルもそうだが、アンカやグスタフまで青い顔をしながら
二人の会話を黙って聞いている状態である。
「兎も角、その娘(便宜上)は昔から儂の所にいたのだ。
お主に娘(便宜上)は絶対やらんぞ」
「ピクシス司令・・・・いえ、お義父様。
私に是非娘さん(便宜上)を下さい。必ず幸せにしてみせます」
「ならん!というか、お主にお義父様と呼ばれる筋合いは無いわ!
お主のような博打打ちと一緒になった所で娘(便宜上)が
幸せになれるとは思えん。早く返すが良い」
「いくらお義父様が反対しようとも、私とナナリーは自分達の愛を
貫き通します」
「ナナリーじゃとっ!?まさか、もう手を出したのか!?」
「いえ、残念ながらまだですが?」
―――嘘だろ!?あのエルヴィン・スミスが
まだ手を出していないだとっ!?
さっさと既成事実を作って自分の虜にする男なのに、
その事実が信じられねぇ!!
昔から手が早くて抱いた女の数は星の数程だと知っているナイルは、
その話を聞いて心の中で酷く動揺した。
・・・まさか、本当に本気の相手・・・なのか?