過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第54章 ナナリー
「誤解しないでくれ。私は昔から君一筋だ。
銀髪の女性と付き合っていたのは事実だが、
どれも君の面影を探していたが故なんだ」
必死の形相にナナシもナイルも目を見張って驚いていると、
どこからか
「ほう?その話詳しく聞かせて貰えんかのう?」
という声が聞こえてきたので三人でそちらを振り向く。
そこにはアンカとグスタフを従えたピクシスが立っていた。
懇親会といえど上官なので、エルヴィンとナイルが
ピクシスに敬礼すると「そんな堅苦しい挨拶はいらんわ」と
制される。
「お疲れ様です、ピクシス司令」
「お久し振りです、ピクシス司令」
「エルヴィンとはついこの間会ったばかりじゃが、
師団長は久し振りじゃな」
「はっ」
当り障りのない会話をしていた三人だったが、
ピクシスはチラリとナナシを見ると目を手で抑え、
泣く仕草をしてみせた。
「うぅ・・・開閉扉の故障の代償が、その娘だったかと思うと
泣けてくるわい。儂が『やらん』と言った者を掻っ攫って
行きおって・・・」
「・・・え・・・っ!?」
何の事情も知らないナイルはピクシスの言葉に目を白黒させて驚き、
エルヴィンへ「おまえ、司令の娘を盗ったのか!?」と
アイコンタクトを送る。
当のエルヴィンは笑顔を崩さず、ナイルのアイコンタクトを
綺麗に無視した。