過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第54章 ナナリー
「ナナシ、次はあちらのテーブルへ挨拶に行こう」
漸く食事にありつけると思っていたナナシは
エルヴィンのその言葉に絶望感を露わにした。
良い匂いがするのに我慢しろと言うのか?と目で訴えると、
彼は笑顔で言い放った。
「まだまだ挨拶しなければならない人が多くてね。
挨拶が終わるまで少し我慢してくれ」
「・・・・・・・・・・・・・・・鬼、悪魔」
ナナシが「話が違う」と訴えてもエルヴィンは笑顔で
「何のことかな?」とはぐらかす。
「おい、エルヴィン久し振りだな」
不意に誰かが話し掛けてきたのでそちらへ身体を向けると、
そこには髭を生やした冴えない男が立っており、
「よう」と気さくに近づいてきた。
「ナイル、久し振りだな」
どうやらエルヴィンの知り合いらしいな、と思っていると、
ナイルと呼ばれた髭面の男はナナシの存在に気付き、
目を大きく見開いた。