過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第54章 ナナリー
「いつもご支援ありがとうございます。
我ら調査兵団はウォール・マリアを奪還出来るように
邁進していく所存です」
「あ、あぁ・・・頑張り給え」
エルヴィンがいつも支援してくれる貴族や商会の人間に
挨拶回りをしていると、彼らはエルヴィンの隣にいるナナシへ
チラチラと視線をやり、気も漫ろな様子を見せた。
その様子に「あ、そういえば」と今思い出したかのように
エルヴィンがナナシを紹介する。
「皆様に紹介致します。私の婚約者の・・・ナナリーと申します。
皆様からは沢山の良い縁談を頂きましたが
私には彼女がおりますので、何卒ご容赦下さい」
・・・ナナリーって誰のことだよ!?と心の中で思ったが、
表情には出さず笑顔で会釈をすると、支援者は明らかな動揺を見せる。
今日も沢山の縁談話を持って来て、娘達も連れて来たのに
婚約者がいるなど寝耳に水である。
「ほう、エルヴィン団長に婚約者がいたとは初耳ですな。
一体どのような出会いをされたのか・・・」
「お恥ずかしい話ですが、若い頃道端で困っていた私を
助けてくれたのが彼女でして・・・それからは長年の片思いが
続きました。ですが、つい先日念願叶って私のプロポーズを
受けてくれたのです。ですので、皆様に紹介させて頂こうかと
本日連れてまいりました」
エルヴィンがべた惚れアピールをすると、
支援者の後ろに控えていた娘達が鋭い視線をナナシに向けてきたので
「おぉ、恐い」と肩を竦めた。
エルヴィンもよくもまぁこんなに法螺話を作れるものだなと
ある意味感心する。