過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第51章 純情
ナナシが来てからというもの、
三時のおやつの時間になるとハンジ達が
エルヴィンの執務室にやってきてお茶を飲むのが恒例になった。
お茶を淹れるのは専らナナシだ。
例の花茶を振る舞ってくれるので、
それを飲みたいがために仕事を切り上げ皆集まってくる。
皆にとってそれが楽しみになっているのだろう。
勿論エルヴィンもその時間が待ち遠しいくらい楽しみで、
ナナシが花茶を淹れている姿をつい目で追ってしまう。
ナナシが全員分のお茶を淹れ終えると、
エルヴィンは思い出したかのようにハンジへ声を掛けた。
「ハンジ、明日は私の供はしなくて良いよ」
「えっ!?どうしたの、突然。とうとうナナシが靡いてくれたの!?」
ハンジが驚いて身を乗り出してきたので、
エルヴィンはやんわりそれを押し返す。
リヴァイとミケも目を見開いて、エルヴィンとナナシを凝視していた。
「・・・残念ながら色好い返事はまだ貰っていなくてね」
「じゃあ、どうして?」
「先程モブリットがここに来て、
『ハンジと行きたいから譲ってくれ』と頭を下げてきた。
だから、君は明日モブリットと行きなさい。
本人からも後で説明があると思うよ」
「ふぅーん・・・まぁ、あたしは全然構わないけど」
そう言ってお茶を口に含んだハンジの頬は心無し赤く見える。
まんざらでも無いハンジの様子に、エルヴィンは頬を緩ませた。