過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第50章 日常的ストーカー
「あまりにも自然な形で女の子の中に溶け込んでいるから、
ナナシの性別を錯覚していたよ!」
「そこら辺の女より女らしいってのが、紛らわしい!
つーか、あれ本当に男なのかっ!?」
「女子力が高くてお嫁にするには好物件で良いが・・・
男の証すら確認出来ていない状況ではもう『女性』で
良いような気がする。いや、私ならナナシが男でも全然構わないのだが・・・」
ハンジ、リヴァイ、エルヴィンの話を聞いたミケは、
更に煽るような爆弾を投下する。
「という事は今、数人の女と男のナナシ一人が密室で
会っている事になるな・・・」
突然エルヴィンは勢い良く立ち上がった。
「・・・つまり、複数の女性兵士にナナシが襲われている
・・・と!?」
何でそうなるっ!?と普段ならツッコむ所だったが、
リヴァイ達もうっかりそれを想像してしまったので
不自然に目を逸らす。
ナナシの事になると予想を斜め上にかっ飛ぶエルヴィンの思考を
理解出来ないと思っていたが、おかしな思考がリヴァイ達にも
感染しつつあった事に、この時は誰も気付かなかった。
慣れと麻痺はこの残酷な世界を生き延びるために必要な防衛本能である。
「うん・・・ごめん。もう止めない。
確か今日は第二会議室だったと思うよ」
「ありがとう、ハンジ!ナナシを助けてくるよ」
覇気のないハンジに、お礼を言ったエルヴィンは
爽やかな風の如く去って行った。
残された三人は「エルヴィンが暴走しなきゃ良いな」と思いながら、
コーヒーを喉に流し込んだ。