過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第49章 男たちの戦い
「エルヴィン・・・ミケの見合いの数は?」
「たった八人だ」
「ふざけんなよ、クソ野郎!!」
一般人から見れば八人も見合い話があれば凄いのだが、
完全に麻痺している二人には「たった」の数である。
歯噛みしながらエルヴィンはナナシへ説得を試みたが、
「ミケと約束したのが先だから・・・」と眉をハの字に
させるだけだった。
どんな相手でも先着順を優先させる公平性があるのは好ましいが、
それは時と場合によってだ。
「ミケはたったの八人・・・私は二十五人だぞ?
もう桁が違うんだ。どちらがより困っているか
聡明な君ならわかってくれるよね?」
「お主と違ってミケは口下手だから・・・八人でもキツイと思うぞ?
逆にお主なら五十人でも百人でも平気そうだがな」
変な方向に信頼があるエルヴィンは、
初めて自分の口の上手さが憎いと思ってしまった。
「俺は相当口下手だ。しかも十六人・・・ミケの倍だ。
おまえは困っている俺を見捨てるのか?」
「そう言われても、先にしたミケとの約束を反故になど出来ぬ・・・」
「ミケは大丈夫だ。奴はやる男だ。俺が保障する」
リヴァイもそう簡単の引き下がるつもりはないらしく、
やけに食い下がってきた。
ナナシが困り果てていると、エルヴィンが「わかった・・・」と
言って大きく息を吐き出す。