過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第49章 男たちの戦い
「・・・・・私の釣書だ。ざっと二十五人」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
葬式のような空気が暫くの間漂ったが、
エルヴィンは咳払いして話の続きを始めた。
「以前までは適当にあしらって誤魔化してきたが、
今回はそうしない」
「・・・どういう意味だ、そりゃあ」
「懇親会では私の婚約者を連れて行く。そうすれば、
もう二度とこんな面倒な戯言に付き合わずに済むからな」
「ほー・・・てめぇに婚約者がいたとは初耳・・・・」
そこまで言ってリヴァイは、はたと気づく。
今この時期に突然『婚約者』を連れて行くと言った
エルヴィンの真意を考えた結果、一つの答えが導き出された。
エルヴィンが『それ』を言う前に、リヴァイは先手を打つため
声を発する。
「俺は恋人としてナナシを連れ・・・っ」
「ナナシを私の婚約者として連れて行き、
全兵団のみならず貴族や商会連中へお披露目して、
既成事実を作る」
言葉を遮り、一気に言い切ったエルヴィンに
リヴァイは紙が挟めそうなくらい眉間に皺を作った。
「先に言ったもん勝ちじゃねぇよな?何で俺の言葉を遮った?」
「おや、すまない。何か言っていたのか。全く聞こえなかった」
「上等だ、てめぇ・・・っ!」
リヴァイがエルヴィンの胸倉を掴んだ所でタイミング良く
ノック音が響いた。
入室してきたのは呼び出しを受けたナナシで、
エルヴィンが別人のような笑顔を彼に向ける。