過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第49章 男たちの戦い
ミケは長い腕を伸ばし、ナナシの髪を優しく撫でる。
「俺にとって、おまえが一番の『特別』だ。
おまえがいなければエルヴィンにも出会えなかったかもしれない」
訓練兵団に入る決意が出来たのは、あの時ナナシに出会えたからだ。
ナナシが自分の嗅覚が恥ずべきものではないと言ってくれた瞬間、
天啓を受けたように衝撃を受けた。
初めて自分を受け入れたのはエルヴィンではなく、
ナナシなのだ。
これでは愛の告白をしているようなものだと思ったが、
ナナシは首を傾げて不思議そうな顔をしていたので、
ミケは少し安堵する。
どうせ告白をするなら、こんな食堂でではなく違う場所が良い。
スッと手を離して飲み終わったカップを持つと、ミケは
「そういえば、エルヴィンが昼食後に執務室に来いと言っていたぞ」
と、やっと本来の目的を口にした。