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過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】

第6章 一触即発




「ナナシって言ったか?今からさっきの続きをやろうぜ。
虚仮にされたままじゃあ仕事も出来ねぇ」

「リヴァイっ!」

「兄貴っ!?」


諌めるように声を上げたファーランとイザベルは、
何とかリヴァイに思い止まって貰おうと説得する。

仕事をする前に内輪揉めしていたのでは話にならない。

イザベルがリヴァイに縋るように
「俺のダチに酷い事しないでくれよ、兄貴」と懇願しているのを、
ナナシは眉を寄せて否定した。


「私はお主のダチなどでは無いぞ。
いつからそうなったのだ?」

「・・・え・・・?」


明らかに傷ついた声色でナナシを凝視したイザベルに、
ナナシは苦い思いを抱く。

ファーランとリヴァイも妹分を悲しませるような事を言ったナナシに
顔を歪めた。


「何でそんな事言うんだよ!俺はおまえの事ダチだって思ってるのに・・・っ!」

「・・・・・・・・」


イザベルに『友達』と言われて正直嬉しかったが、
それを手放しで喜べる程ナナシは楽観主義でも無かった。


ナナシの仲間や親しかった人間は必ずと言っていいほど不幸になった。
多くの近しい人間は死に、
生き残った者達もそれぞれ不幸を背負い込む羽目になり、
普通の暮らしも儘ならない生活を余儀なくされた。


今いるこの場所の住民だったヴィレムもその一人だ。
自分と出会わなければ、日の当たる場所で普通の生活が
出来ていただろうと思ってしまう。


会ったばかりのこの三人の幸福を願うつもりは無いが、
せめて自分のせいで不幸にならなければ良いとは考えていた。


「私は・・・お主達を友達とも仲間とも思わん。
ただ同じ場所に盗みに入る同業者と思っておる」


ナナシの言葉に更に傷つき、イザベルは涙を堪えて唇を噛み締めた。

その姿を痛ましいとは思ったが、ナナシは視線を逸し
「打ち合わせはまた明日」と言って、この場から逃げ出すように歩き出す。


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