過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第45章 恋愛相談と恋愛観
「落ち着いたようだね」
「・・・・・」
こくりとナナシが無言で頷いたのを確認し、
エルヴィンは「良かった」とまたナナシの頭を撫でた。
すると「くぅぅぅぅ・・・」と、ナナシの腹の虫が
可愛らしい音を立てて鳴いたので、エルヴィンは思わず
「ぷっ!」と吹き出してしまった。
緊張感と良い雰囲気が台無しである。
ナナシは頬を赤く染めて、お腹を撫でながら
「お腹空いた」とエルヴィンに訴えた。
ある意味エルヴィンのせいで、
まだ昼食にありつけていないのだと主張するナナシに、
エルヴィンは「ごめん、ごめん」と笑いながら
ナナシの背中を押して歩き出す。
兵舎へ歩き出して、暫くするとナナシは足を止め
エルヴィンを見上げた。
その顔は眉尻が下がっていて躊躇う仕草が見受けられたが、
ナナシははっきり告げた。
「私は・・・・あの人に自分の全てを捧げているから、
全てを取り戻すまでお主の気持ちには応えられない・・・と、思う。
愛情とかそういうのも・・・今は彼の『心臓』と共にあるから、私の中で欠落しておるのだ。だから、すぐにテンパってしまう・・・」
意外な告白にエルヴィンは一瞬目を見開いたが、
すぐ平常心に戻ると
「それは『心臓』を取り戻せば、
私の気持ちに応えてくれる・・・という事で良いのか?」
と直球で聞き返した。
これはある意味、先程エルヴィンが言ったプロポーズの
返事のようなものだろう。
ナナシは返答に困ったようだったが、真っ直ぐエルヴィンを
見つめて言った。