過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第45章 恋愛相談と恋愛観
「まだ鍼を持っているだろう?全部出しなさい」
いやいや、と首を横に振る姿はまるで子供のようで、
もしかしたらこれが本来のナナシなのかもしれない。
親を前に駄々を捏ねる子供のように逃げを打つ身体を
エルヴィンは捕えたまま離さず、ナナシのジャケットの内側から
鍼一式が仕舞われている袋を取り出した。
「もう二度と首に鍼を刺してはいけないよ。
君のためにもならないんだ。自分の頭でよく考えなさい」
「か、返せ!やだ・・・っ!刺さないと私は・・・っ!!」
「落ち着いて、深呼吸しなさい」
ぎゅっと抱き込んでナナシの動きを封じる。
エルヴィンが抱いてしまえば小柄なナナシはすっぽりと全身が
覆われてしまう。
普段のナナシであればエルヴィンを突き飛ばしたり出来ただろうが、
錯乱状態にある彼ではそれが出来ないようだ。
子供に言い聞かせるように「落ち着いて、落ち着いて」と
頭を優しく撫でながら、ナナシが落ち着くのを待った。
荒かったナナシの呼吸が段々落ち着きを取り戻し始め、
暫くすると正常に戻ったのでエルヴィンがナナシの顔を覗き込むと、
未だ少し虚ろな目をしたナナシもエルヴィンを見つめ返す。