過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第45章 恋愛相談と恋愛観
いけない・・・このままでは私は戦えなくなってしまう。
感情を殺さないと。
ナナシは懐に仕舞っていた細い鍼を取り出し、
首筋にそれを突き立てようとしたが、
既の所でエルヴィンに阻止され鍼を取り上げられてしまった。
「何をしようとしたんだ、ナナシ!馬鹿な真似は止しなさい!」
虚ろな目をしながらナナシは首を傾げた。
エルヴィンは何故そんなに怒っているのだろうか?
ただの治療なのに。
「治療の為だ・・・返してくれ」
「・・・治療?」
取り上げられた鍼を取り戻そうと手を伸ばすが、
背の高いエルヴィンが高い所にやってしまえば到底届かない。
精彩さを欠くナナシの動きにエルヴィンは眉根を寄せた。
「首に刺すと・・・冷静になれるから・・・・」
その言葉で漸くエルヴィンの中のパズルの一つが組み上がった。
ナナシに向けられる『愛情』や『好意』をリセットさせる原因は、
この『治療』なのだ。
冷静になれる・・・というのは、
自分を乱す要因である感情を排除するからで、
根本的な問題の解決にはなっていない。
この行為は止めさせなければ、とエルヴィンは取り上げた鍼を
ポキっとへし折って、使い物にならなくする。
これまで、ナナシの鍼治療を素晴らしいと思っていたが
考え方を改めなければならないだろう。