過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第45章 恋愛相談と恋愛観
正確には『改造手術』の跡では無いが、
醜い傷跡があるのには変わりない。
それを見られた時、エルヴィンにどんな顔をされるのか恐かった。
それに人間と交わってどうするというのだろうか?
例えナナシが女性体となっても、人間と妖では
生殖機能が違うのか子を成す事が出来ず、
その行為には生産性が無い。
エルヴィンの言っている意味がよくわからなくて、
ナナシの頭は混乱する。
妖であるナナシにとって、そういう行為は相手に服従する為か、
子孫を残す為の行為だという考え方があった。
ソロモンの時は、契約や服従という意味もあって求められれば
それに従った。
でもエルヴィンの場合は契約も主従関係も存在しないので、
その行為をする必要性を感じなかった。
そこでナナシは自身の矛盾に気づく。
自分はソロモンに『愛情』を感じて抱かれていたはずなのに、
何故今それがすぐ頭に浮かばなかったのだろうか、と。
ソロモンに抱かれた時の記憶を辿ろうとしたが、
何故かぽっかり穴が空いたようにその記憶が思い出せなかった。
・・・おかしい。
自分は確かに彼に抱かれて「気持ちよかった」とか充足感が
あったはずなのに、その時の光景が具体的に思い出せない。
「・・・え?あれ?」
どうして?
ソロモンとの大事な記憶が無くなっている・・・。
震えも暴れもしなくなったナナシの様子に気づいたエルヴィンが
ナナシの名を呼ぶが、何の反応も無い事を怪訝に思い顔を覗き込むと、
焦点の合わない視線が空を彷徨っていた。