過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第45章 恋愛相談と恋愛観
「だったら私はBとはそういう関係にはなれぬ」
「えっ!?何故ですかっ!?」
「私は・・・ずっと一緒に居られぬし、子供も作れん。
第一にAへの想いが先につく。それなのにBとそういう関係になるのは
あまりにも不誠実ではないか。AにとってもBにとってもな。
少なくとも私はそういう曖昧な関係より
最初から一線引く方が良いと思っている」
「・・・・・・・・・・・」
この人は真面目過ぎるんだ、とエルドは思った。
多分どんな相手だろうと軽い遊びのつもりで付き合う事が
出来ないタイプの人間だ。
両極端。零か十の考え。
Aを想い続けている事から一途で堅実なのはわかっていたが、
ここまでくると病的なまでに潔癖かもしれない。
「あなたの気持ちは?そこにあなたの気持ちは存在するんですか?」
硬い声で言ったエルドの表情は真剣そのもので、
ナナシを痛々しそうに見つめていた。
「自分には事情がよくわかりませんが・・・
そういう複雑な背景を抜きにしてBさんの事を考えられないんでしょうか?
あなたの考え方は最初から何もかも諦めていて、
拾う前から全てを捨ててしまっている気がします。
それでは、あなたも団長も報われないと思うんです」
うっかり団長と言ってしまったが、もう構わないとエルドは思った。
何となく、どちらも片思いの一方通行な想いを抱えているように
見えて歯痒かったのだ。
エルヴィンは兎も角、ナナシの場合飛んできた想いを
その直前で切り捨てている節があったから、
まずはその頑なな考えを直さねば先に進まないだろう。
エルドが心配そうに返答を待っていると、
恐ろしい程に表情を失くしたナナシが予想外の答えを齎した。