過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第44章 変態と鈍感
「すまない・・・言い過ぎた」
そっとナナシの頬に手を添わせようとした所で
一気に浮遊感に襲われ、エルヴィンはソファの前に
置かれた机の上に叩き付けられた。
少し遅れて自分は綺麗な一本背負いを食らったのだと気付き、
自分の下敷きになり粉々になった机の破片が
部屋に飛び散ってくのを目の隅で捉える。
「愚鈍で・・・悪かったな!」
泣きそうな顔でそう叫ぶとナナシは部屋を飛び出して行ってしまい、
エルヴィンは軋む背中に顔を歪めながら溜息をつく。
「大丈夫か?エルヴィン・・・」
「あぁ・・・何とかな」
ミケの気遣わしい声に答え、起き上がると
全員から微妙な顔をされて居心地が悪くなった。
「エルヴィン、わかっていると思うけど、あれは・・・言い過ぎだよ。
ナナシって男って言い張ってるけど思考は乙女だから・・・」
「それに何だかんだ言って、ナナシはエルヴィンに
尽くしていると思うよ?今日だって・・・」
ナナバとハンジが部屋の隅に置いてある荷物に視線を投げながら、
微苦笑を浮かべる。
「自分用に買ったのは最低限の下着くらいで、
他の買い物は多分エルヴィンの為の物だったと思うんだ。
お茶を淹れよう、お菓子作ろうって・・・。
仕事を頑張り過ぎてる貴方が心配だったんだよ」