過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第44章 変態と鈍感
エルヴィンはナナシの肩をガシっと掴むと、
凄みのある笑顔を向けた。
「ナナシ・・・ローゼかシーナに家を買おう。
そして、君はそこに住みなさい。絶対に、二度と、
実家へ帰ってはいけないよ?」
「でも、私が当主・・・・」
「だったら、五人の男共を全員追い出しなさい。
そいつらはいずれ君に害をなす存在だ」
「・・・・・・・」
エルヴィンに家族を誹謗するような事を言われて、
ナナシはムッとする。
何故会ったこともない人間に彼らが
そんな事を言われなければならないのか。
「・・・エルヴィンなんか、嫌いだ。
どうしてそのような事を言われなければならないのだ」
「君の為だ。では尋ねるが、彼らが君を抱こうとしたら
それを許すのか?」
「あやつらはお主とは違って、そんな事しない。
ちゃんと私の気持ちを汲み取ってくれる良い奴らだ。
今までだってそんな事してこなかった」
「それはただ単に彼らが極限まで我慢していたからだ」
「何故お主にそれがわかる!?」
「わかるさ、君の愚鈍な恋愛観に振り回されているからね」
言ってからエルヴィンは「しまった!」と思ったが、
一度発せられた言葉は二度と戻らない。