過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第44章 変態と鈍感
ナナシ以外の全員がチラリとエルヴィンを盗み見ると、
彼の目には嫉妬と憎悪の炎が渦巻いていた。
これは・・・件の『ヤンデレ』(仮名)を殺してやるとか
思っているな。
エルヴィンから絶対零度の空気が放出されていて、
本当に薄ら寒い。
それに気づいていないのはナナシのみだったが、
ハンジも大概命知らずだったので話の続きを促してしまった。
「じゃあ、鍵替えたからその『ヤンデレ』君とは
もう寝なくなったんだよね?」
「斯く斯く然々で、日替わりで何故か全員と寝るようになった」
「・・・・え・・・・・?」
何でそうなる!?
おかしいだろ、それは!と非常識なハンジでも心の中で絶叫した。
エルヴィンが永久凍土を構築しそうな勢いで室内の空気を下げる。
「その斯く斯く然々を教えてくれないかな?ナナシ」
言い出しっぺのハンジがエルヴィンからのプレッシャーに
耐えながら尋ねた。
「実は私もよくわからないのだが・・・
毎夜違う奴が私の私室を訪ねてきて『不眠症で困っているから
一緒に寝て欲しい』と言われて、では仕方無いかと・・・」
一応、家族だし?
小首を傾げながらそう言ったナナシは大変可愛らしいが、
語られた内容は実に可愛らしくない、とエルヴィンは思った。
何故そんな無防備で誰かと寝てしまっていたのか・・・と
ぐるぐる怒りが湧いてくる。
しかも他の連中は『ヤンデレ』に乗っかって、
ちゃっかりナナシと同衾していただとっ!?
許すまじ!!