過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第40章 どっちもどっち
「これは私情でもあるが公でもある。
まさか調査兵団の実力者であるおまえ達に限って
巨人よりナナシが怖い・・・なんて事言わないよな?」
あからさまなエルヴィンの挑発にムッとする。
今まで自信満々にナナシを口説き落とすと言って
失敗してきたエルヴィンに、言い返してやりたかった。
「なぁ・・・思ったんだが、ナナシが惚れる相手は
エルヴィンじゃなくても良いんじゃないか?
要は調査兵団に協力させれば良い訳だし・・・」
「ミケの言う通りだ。別にてめぇである必要は無ぇよ。
ナナシだって気があるどころかエルヴィンを警戒している訳だし・・・」
「何を言い出すんだ、二人共。では誰が適任だと言うんだ?」
額に青筋を立て始めたエルヴィンに「やばい」と感じたものの、
ここまで言ってしまっては引っ込みがつかなかったので
打開策を打ち出す。
「ミケに惚れさせれば良い」
「リヴァイに惚れさせれば良いんじゃないか?」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
同時にリヴァイとミケが言った代替案に全員が沈黙する。
名前を言い合ったリヴァイとミケは互いの顔を見合わせながら
「本気で言ってんのか?」と無言で会話し、
エルヴィンはそんな二人を鋭い眼差しで睨みつけていた。
この場に第三者がいれば、ナナシの性別について言及しただろうが
生憎ここにはそんな常識人存在しないし、
『ナナシが好きなのは男』という前提が覆ったかどうかはわからない。
「では聞くが、おまえ達はナナシを抱く事が出来るのか?」
感情を全て削ぎ落とした声で言ったエルヴィンの言葉に
リヴァイとミケは目を瞑って真剣に考える。
全体的に小柄で年齢性別不詳の姿を想像する。
誰もナナシの身体を見たことがないので男か女かわからないが、
顔は綺麗な方なのでイケる気がしてきた。
が、それを今目の前の男に言ったら恐ろしいので
二人は答えを曖昧に濁す。
きっとこの場に常識人の第三者がいれば、
理路整然と様々な間違いを正してくれたかもしれない。