過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第40章 どっちもどっち
「唯一ナナシが可愛らしく頬を染めたのは、
服を着替えさせ終わって髪を拭いていた時だった。
不意に『黙っていれば良い男なのに・・・』と言われたのだが、
これはどういう意味だろうか?きっちり髪を整えず
前髪を下ろしていた方が良いという事なのか?」
いや、それ絶対違う。
言葉の通り、エルヴィンが奇行に走らず
黙っていればカッコイイというナナシなりの褒め言葉だ。
ナナシの前では変な行動ばかり取っているので、
ナナシの脳内では『エルヴィン=変態』という図式に
なってしまっているのだ、きっと。
そして『普通にしているエルヴィンならイケメン』という考えも
持っているという事だろう。
頭は良い癖に何故肝心なナナシに対しては
壊滅的な考え方しか出来ないのか不思議でならない。
資金集めの為に口説いている女と同じように接すれば、
ナナシもエルヴィンに惚れるんじゃ…と思わなくもないが、
それを言ってしまったら失敗した時に双方から恨まれる場合があるので
教えてやらない。
「男は黙って仕事している姿の方がかっこいい・・・
という意味じゃないか?」
珍しく口下手なミケが何とか気の利いた台詞を捻り出すと、
エルヴィンは何かを考えるように黙り込んだ。
少しすると「二人に協力してもらいたい事がある」と
話を切り出してきた。
「おまえ達二人ならナナシに警戒されていないだろう?
ナナシの食事か飲み物かに薬を混ぜて欲しい」
全く懲りてない上、
恐ろしい協力要請に二人はピシャリと断った。
「ふざけんな、てめぇの私情に巻き込むな」
「無理だ。おまえと同じように手足の関節外されて
気絶するまで痛めつけられるのは御免だ」